1 事案の概要
珍しい案件を経験したので、依頼人の了解を得た上で、ブログに書きたいと思います。
依頼人から聞き取った話によると、依頼人は、亡くなった方(以下「被相続人」といいます。)から、生前、「公正証書遺言であなたに財産を残す。」と伝えられていたとのことでした。
なお、依頼人と被相続人との関係は、ビジネス上のお付き合いでしたが、公私ともに親しい間柄でした。
しかし、被相続人の死後、依頼人は、相続人から、
「遺言はある。しかし、あなたに見せることはできない。」
と言われたそうです。
依頼人は、被相続人の言葉を信じていたため、自分に対する遺贈の有無を確認したいと思い、自ら公証役場に赴き、被相続人の公正証書遺言の検索を試みました。
ところが、相続人ではないことから、ほとんど相手にされず、最終的に私のところへ相談に来ました。
2 公証役場における遺言検索
あまり知られていませんが、公証役場では、遺言検索という実務上のサービスが行われています。
平成元年以降に作成された公正証書遺言については、日本公証人連合会において、全国の公証役場で作成された遺言公正証書の情報(作成公証役場名、公証人名、遺言者の氏名及びよみがな、生年月日、性別、国籍、作成年月日等)が管理されています。全国の公証役場では、この情報に基づき、遺言公正証書の有無及び保管公証役場を検索することができます。
もっとも、誰でも自由に検索できるわけではありません。
通常、検索できるのは、
・相続人
・遺言執行者
・受遺者
・その他の利害関係人
など、法律上の利害関係を有する者に限られます。
今回問題となったのは、相続人としての請求ではなく、受遺者としての利害関係人請求でした。
つまり、自分に遺贈する内容の遺言が存在する可能性があるため、その確認を求めるというケースです。
3 公証役場ごとに実務運用に差がある
もっとも、この利害関係人としてどこまで検索に応じるかは、公証役場ごとに実務運用がかなり異なります。
本件では、被相続人の除籍謄本等を持参した上で、公正証書遺言の検索を依頼しました。
ところが、T公証役場では、「受遺者では検索できない。」との対応で、検索自体をしてもらうことができませんでした。
一方で、F公証役場では、資料提出を行ったところ、実際に遺言検索を実施してもらうことができました。
もちろん、これはどちらの公証役場の実務運用が正しいという単純な話ではありません。
公証役場側としても、
・本当に利害関係人なのか
・遺言内容に関係する立場なのか
・個人情報保護との関係をどう考えるか
・相続人以外にどこまで情報開示するか
など、慎重にならざるを得ない事情があります。
特に、受遺者であると主張していても、本当に受遺者なのかという点が問題になります。
4 まとめ
今回実感したのは、1つの公証役場で断られても、それで終わりではないという点です。
前述のとおり、実務運用には一定の差があり、公証役場によって対応が異なることがあります。
そのため、T公証役場で断られたから無理ではなく、F公証役場にも事情を説明してみるという視点は、実務上かなり重要だと感じました。
遺言の存在を把握できるかどうかで、その後の権利関係は大きく変わることがあります。
特に、受遺者としての立場が問題となる案件では、利害関係人としてどこまで情報取得できるかが、実務上の重要論点になります。
公正証書遺言の検索は、単なる形式的手続ではなく、実際にはかなり現場実務の色合いが強い分野だといえるでしょう。
なお、利害関係人として遺言検索を行う場合には、被相続人の除籍謄本等が必要となることがあります。
もっとも、受遺者など親族ではない立場の場合、これらの資料収集自体が難航することも少なくありません。
そのため、実際に利害関係人として公正証書遺言の検索を行う場合には、弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。


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