相手が離婚に応じないとき、どうすればいい?協議・調停・裁判の流れを解説

離婚

「離婚したいと伝えたけれど、相手が絶対に離婚しないと言っている。」

「もう何年も夫婦関係は悪いのに、相手が離婚届を書いてくれない。」

離婚のご相談では、このようなケースも少なくありません。

相手が離婚に同意してくれないからといって、それだけで離婚を諦めなければならないわけではありません。

もっとも、「自分が離婚したいと思っている。」というだけで、直ちに裁判所が離婚を認めてくれるわけでもありません。

相手が離婚に応じない場合には、協議、離婚調停、離婚訴訟という流れを意識しながら、それぞれの段階で何を整理し、何を主張していくのかを考える必要があります。

今回は、相手が離婚に応じない場合の手続について説明します。

1 まず確認したいのは「何について合意できていないのか。」

「離婚の話合いがまとまらない。」といっても、実際にはいくつかのパターンがあります。

  • 相手が離婚そのものを拒否している
  • 離婚することには同意しているが、親権について合意できない
  • 養育費の金額がまとまらない
  • 財産分与について意見が対立している
  • 慰謝料を支払うかどうかで争っている

この違いは非常に重要です。

離婚そのものについて双方が合意しており、その他の条件も整理できれば、協議離婚によって解決することができます。

一方、「自分は離婚したい。しかし相手は離婚したくない。」という場合には、離婚そのものが争点になります。

まずは、「離婚について争っているのか。」、それとも「離婚の条件について争っているのか。」を分けて考えると、その後の方針を整理しやすくなります。

2 話合いで解決できなければ、家庭裁判所の離婚調停へ

当事者間で離婚の話合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に夫婦関係調整調停、いわゆる離婚調停を申し立てる方法があります。

離婚調停は、裁判官が一方的に離婚するかどうかを決める手続ではありません。

調停委員を介して、双方の事情や希望を確認しながら、合意による解決を目指す手続です。

そのため、「相手と直接話すと感情的になってしまう。」「相手が話合いそのものに応じてくれない。」という場合にも、家庭裁判所という第三者を介して話し合うことができます。

また、離婚調停では、単に離婚するかどうかだけを話し合うわけではありません。

  • 離婚後の親権
  • 子どもの生活
  • 養育費
  • 親子交流
  • 財産分与
  • 年金分割
  • 慰謝料

などについても、一緒に話し合うことができます。

特に子どもがいる場合には、令和8年4月1日から離婚後の親権制度が改正されています。

現在は、父母双方を親権者とする場合と、父母の一方のみを親権者とする場合があり、具体的な事情に応じて子の利益の観点から決めることになります。

「共同親権が原則」「単独親権が例外」という制度ではありません。

3 離婚調停を申し立てれば、必ず離婚できるわけではない

ここは誤解されやすいところです。

離婚調停は、あくまで話合いによる解決を目指す手続です。

そのため、一方が最後まで離婚に同意しなければ、原則として調停だけで離婚を成立させることはできません。

話合いがまとまらなければ、調停は不成立となります。

そして、離婚そのものについてさらに裁判所の判断を求めるのであれば、離婚訴訟を提起することになります。

養育費や婚姻費用などの調停の場合には、調停が不成立になると審判に移行するものがあります。

これに対し、離婚調停が不成立になったからといって、自動的に裁判官が離婚の可否を判断する手続へ移るわけではありません。

改めて離婚訴訟を提起する必要があります。

4 原則として、いきなり離婚裁判をすることはできない

「相手と話をしても無駄なので、最初から裁判をしたい。」

そう考える方もいると思います。

しかし、離婚について裁判をする場合には、原則として、先に家庭裁判所の調停手続を経る必要があります。

一般に調停前置と呼ばれる仕組みです。

夫婦や家族の問題については、まず話合いによる解決を試みることが予定されているためです。

もっとも、相手の所在が分からないなど、そもそも調停を行うことができないような事情がある場合には、例外的に最初から訴訟を提起できる場合もあります。

5 離婚裁判では「離婚したい。」という気持ちだけでは足りない

離婚調停と離婚訴訟の大きな違いはここにあります。

調停では、双方が最終的に合意すれば離婚することができます。

これに対して、相手が離婚を拒否している状態で判決による離婚を求める場合には、民法上の離婚原因が認められる必要があります。

民法第七百七十条は、裁判上の離婚原因について定めています。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき。
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
  4. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

実際の離婚事件では、別居期間、夫婦間のやり取り、暴力や暴言の有無、生活費の支払状況、夫婦関係が悪化した経緯など、様々な事情から婚姻関係が破綻しているかが争われることがあります。

したがって、「もう愛情がないから離婚したい。」という気持ちと、「法律上、裁判で離婚が認められるか。」という問題は分けて考える必要があります。

6 離婚を考えた段階から「証拠」を意識する

離婚のご相談で重要だと感じることの一つが、証拠です。

当事者本人にとっては、「長年こんなことをされてきた。」ということが当然の事実であっても、裁判になれば、その事実を相手が否定する可能性があります。

  • メールやメッセージの履歴
  • 録音
  • 写真
  • 診断書
  • 警察や行政機関への相談記録
  • 生活費の振込記録
  • 預金通帳
  • クレジットカードの明細
  • 不動産や保険に関する資料

などが、事案によって重要になることがあります。

もちろん、どの資料が必要なのかは、それぞれのケースで異なります。

しかし、離婚を切り出した後に相手との関係がさらに悪化すると、それまで確認できていた資料が確認できなくなることもあります。

そのため、離婚を具体的に考え始めた段階で、「今後、何が問題になりそうなのか。」「それを確認できる資料は何か。」を整理しておくことは重要です。

7 子どもとお金の問題を、離婚そのものと分けて整理する

離婚事件では、問題が一つだけということはむしろ少ないと思います。

例えば、「離婚したい。」という問題と同時に、「子どもは誰と暮らすのか。」「親権をどうするのか。」「養育費はいくらにするのか。」「自宅をどうするのか。」「預貯金をどう分けるのか。」という問題が発生します。

これらを全部まとめて考えてしまうと、当事者自身も何を優先したいのか分からなくなることがあります。

そこで、次のように問題を分けて整理することをおすすめします。

  1. 離婚そのもの
  2. 子どもに関する問題
  3. 毎月のお金に関する問題
  4. 夫婦の財産に関する問題
  5. 慰謝料など過去の行為に関する問題

問題を一つずつ分けていくと、「ここについては合意できる。」「ここについては証拠が必要である。」「ここだけは裁判所の判断が必要になるかもしれない。」ということが見えてきます。

相手が離婚に応じないからといって、そこで終わりではない

相手が離婚届を書いてくれない場合でも、それだけで離婚できないことが確定するわけではありません。

まずは協議による解決を検討し、難しければ家庭裁判所の離婚調停を利用し、それでも解決できなければ離婚訴訟を検討することになります。

ただし、離婚訴訟になれば、最終的には法律上の離婚原因があるかどうかが問題になります。

そのため、離婚を考え始めた段階で、離婚そのものについて何が争いになっているのか、子どもについて何を決める必要があるのか、養育費や財産分与についてどのような問題があるのか、どのような証拠があるのかを整理しておくことが重要です。

離婚するかどうかについて迷っている段階であっても、現在の状況を法的に整理することはできます。

「離婚すると決めてから弁護士に相談する。」のではなく、「どのような選択肢があるのかを知るために相談する。」という方法もあります。

※本記事は一般的な法律情報を説明するものであり、個別の事案についての法的判断を示すものではありません。具体的な事情によって結論は異なります。

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