1 事案の概要
理髪店を経営する依頼者(以下「依頼者」といいます。)が、店舗収益化サービスを行う業者から営業を受けた事案です。
業者の説明によれば、
・店舗にQRコードを設置するだけ
・来店客がアンケートに回答する
・美容・健康関連サービスへ誘導される
・成果に応じて店舗側へ報酬が支払われる
・絶対に儲かる
・最大70%バック
・「半年間は実質無料」
・利益が出なければ自由に辞められる
・毎月8万円払ってもらうが2年間利益が出なければ返金する
などの説明があったそうです。
しかし、実際に契約書を確認すると、
・契約直後から月額費用が発生する
・中途解約が容易ではない
・利益保証や返金保証の記載が存在しない
という内容でした。
依頼者は、「話が違うのではないか。」と不安になり、相談に来られました。
2 本件で問題となった点
⑴ 契約前説明と契約内容のズレ
本件では、契約締結前の説明と契約書の内容に大きな差異がありました。
実務上、このようなケースでは、
・不実告知
・誤認を生じさせる説明
などが問題となる可能性があります。
特に、
「絶対に儲かる。」「無料。」「損をしない。」
という説明は、後から紛争化しやすい典型例です。
⑵ 電話営業中に契約を急がせる手法
本件では、電話中にそのままクラウドサインで契約締結を求められていました。
この種の案件では、
・「今だけ。」
・「今日契約しないと条件が変わる。」
・「すぐ決めた方が良い。」
などと契約を急がせるケースがあります。
しかし、契約内容を十分に検討する時間を与えない勧誘方法には注意が必要です。
⑶ 個人事業主は消費者と同じ保護を受けられない場合がある
個人事業主の場合、消費者契約法の適用が問題となることがあります。
そのため、
「事業者だから自己責任です。」
という反論を受けるケースもあります。
もっとも、実際の勧誘態様や契約内容によっては、なお法的問題が生じる余地があります。
3 依頼者が行っていた重要な対応
本件では、依頼者側に営業時の録音が残されていました。
これは極めて重要でした。
契約トラブルでは、
「そのような説明はしていない。」
と争われることが非常に多いためです。
録音によって、
・「半年無料」という説明
・利益保証に関する説明
・即決を求める発言
などを客観的に確認できました。
実務上、録音の有無で交渉力が大きく変わることがあります。
4 どのように対応したか
本件では、まず、
・契約書
・クラウドサインの内容
・録音データ
・LINE等のやり取り
を整理しました。
その上で、
・契約締結前説明の問題点
・契約内容との不一致
・誤認を与える説明の有無
・解約条項の妥当性
などを検討し、業者側へ契約の取消し通知を行いました。
5 最終的な解決
本件では、依頼者が個人事業主として契約していたことなどから、消費者契約法及び特定商取引法による取消し・解除を正面から主張することには慎重な検討を要する事案でした。
そこで、契約締結前の説明内容と実際の契約内容との食い違いを踏まえ、錯誤取消しを主張しました。
その結果、最終的に、依頼者側に大きな不利益が生じる前の段階で解決に至りました。
6 最後に
本件で特に重要だったのは、
・早い段階で相談をいただいたこと
・録音等の証拠が残っていたこと
でした。
この種の案件では、おかしいと思いながら支払を続けてしまい、被害が拡大するケースも少なくありません。
最近は、
・店舗収益化
・副業
・医療・美容系アフィリエイト
・SNS集客
・成果報酬型サービス
などを利用した営業が増えています。
もちろん、全てが問題というわけではありませんが、中には詐欺まがいの営業もあります。
特に、
・絶対儲かる
・リスクなし
・無料
・放置で利益がでる
・後で返金する
などという説明が出てきた場合には、一歩立ち止まり、慎重な検討が必要です。
うますぎる話には、慎重になった方がよい場面があります。
「なにかおかしいな。」など違和感を覚えた場合、すぐに弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
詐欺業者にお金を払ってしまった場合、弁護士であっても取り返すことは困難です。できるだけ早く専門家に相談しましょう。


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